労働基準法(昭二二・四・七法律第四十九号:成立時法)
施行:(S22.9.1-S22政令170、S22.11.1-S22政令227)
改正履歴(全改正内容条項)

朕は、帝国議会の協賛を経た労働基準法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。

御名 御璽

 昭和二十二年四月五日
  内閣総理大臣  吉田  茂
  司 法 大臣  木村篤太郎
  厚 生 大臣  河合 良成
  運 輸 大臣  増田甲子七
  商 工 大臣  石井光次郎

 第一章 総則
 第二章 労働契約
 第三章 賃金
 第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
 第五章 安全及び衛生
 第六章 女子及び年少者
 第七章 技能者の養成
 第八章 災害補償
 第九章 就業規則
 第十章 寄宿舎
 第十一章 監督機関
 第十二章 雑則
 第十三章 罰則

第一章 総則

(労働條件の原則)
第一條 労働條件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2 この法律で定める労働條件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働條件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

(労働條件の決定)
第二條 労働條件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

(均等待遇)
第三條 使用者は、労働者の国籍、信條又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働條件について、差別的取扱をしてはならない。

(男女同一賃金の原則)
第四條 使用者は、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。

(強制労働の禁止)
第五條 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

(中間搾取の排除)
第六條 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

(公民権行使の保障)
第七條 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

(適用事業の範囲)
第八條 この法律は、左の各号の一に該当する事業又は事務所について適用する。但し、同居の親族のみを使用する事業若しくは事務所又は家事使用人については適用しない。
 物の製造、改造、加工、修理、浄洗、選別、包装、装飾、仕上、販売のためにする仕立、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)
 鉱業、砂鉱業、石切業その他土石又は鉱物採取の事業
 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
 船きよ、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱の事業
 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
十一 郵便、電信又は電話の事業
十二 教育、研究又は調査の事業
十三 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
十四 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
十五 焼却、清掃又は、と殺の事業
十六 前各号に該当しない官公署
十七 その他命令で定める事業又は事務所


(定義)
第九條 この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、前條の事業又は事務所(以下事業という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

第十條 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

第十一條 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞與その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

第十二條 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。但し、その金額は、左の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
2 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。
3 前二項に規定する期間中に、左の各号の一に該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。
 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
 産前産後の女子が第六十五條の規定によつて休業した期間
 使用者の責に帰すべき事由によつて休業した期間
 試の使用期間
4 第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。
5 賃金が通貨以外のもので支払われる場合、第一項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、命令で定める。
6 雇入後三箇月に満たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。
7 日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、労働に関する主務大臣の定める金額を平均賃金とする。
8 第一項乃至第六項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、労働に関する主務大臣の定めるところによる。

第二章 労働契約

(この法律違反の契約)
第十三條 この法律で定める基準に達しない労働條件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

(契約期間)
第十四條 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの外は、一年を超える期間について締結してはならない。

(労働條件の明示)
第十五條 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働條件を明示しなければならない。
2 前項の規定によつて明示された労働條件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

(賠償予定の禁止)
第十六條 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

(前借金相殺の禁止)
第十七條 使用者は、前借金その他労働することを條件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

(強制貯金)
第十八條 使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
2 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、保管及び返還の方法を定めて行政官庁の認可を受けなければならない。

(解雇制限)
第十九條 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女子が第六十五條の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。但し、使用者が、第八十一條の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

(解雇の予告)
第二十條 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前條第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

第二十一條 前條の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
 日日雇い入れられる者
 二箇月以内の期間を定めて使用される者
 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
 試の使用期間中の者

(使用証明)
第二十二條 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位及び賃金について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2 前項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
3 使用者は、予め第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信條、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

(金品の返還)
第二十三條 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。

第三章 賃金

(賃金の支払)
第二十四條 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。但し、法令若しくは労働協約に別段の定がある場合においては、賃金の一部を控除し、又は通貨以外のもので支払うことができる。
2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。但し、臨時に支払われる賃金、賞與その他これに準ずるもので命令で定める賃金については、この限りではない。

(非常時払)
第二十五條 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他命令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

(休業手当)
第二十六條 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

(出来高払制の保障給)
第二十七條 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

(最低賃金)
第二十八條 行政官庁は、必要であると認める場合においては、一定の事業又は職業に従事する労働者について最低賃金を定めることができる。

第二十九條 最低賃金に関する事項を審議させるために、中央賃金委員会及び地方賃金委員会を置く。
2 賃金委員会の委員は、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者について、行政官庁が各々同数を委嘱する。但し、労働者を代表する者及び使用者を代表する者は、関係者の推薦に基づいて委嘱する。
3 この法律で定めるものの外、賃金委員会に関し必要な事項は、命令で定める。

第三十條 行政官庁が最低賃金を定めようとする場合においては、予め賃金委員会の調査及び意見を求めなければならない。
2 前項の場合、賃金委員会は、一定の事業又は職業に従事する労働者の最低賃金額についての意見を、行政官庁に提出しなければならない。
3 行政官庁は、前項の意見について公聴会を開いた後に、賃金委員会及び公聴会の意見に基づいて、最低賃金を定めなければならない。
4 地方行政官庁が最低賃金を定めようとする場合においては、前三項の規定による手続きを経た後に、労働に関する主務大臣の承認を受けなければならない。
5 賃金委員会は、必要であると認める場合においては、賃金に関する事項について行政官庁に建議することができる。

第三十一條 最低賃金が定められた場合においては、使用者は、その金額に達しない賃金で労働者を使用してはならない。但し、左の場合においては、この限りでない。
 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低位な者について、行政官庁の認定を受けた場合
 労働者の都合により所定労働時間に満たない時間の労働をした場合
 試の使用期間中の者又は所定労働時間の特に短い者について、行政官庁の許可を受けた場合

第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇

(労働時間)
第三十二條 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間、一週間について四十八時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、就業規則その他により、四週間を平均し一週間の労働時間が四十八時間を超えない定をした場合においては、その定により前項の規定にかかわらず、特定の日において八時間又は特定の週において四十八時間を超えて、労働させることができる。

第三十三條 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において前條又は第四十條の労働時間を延長することができる。但し、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
2 前項但書の規定による届出があつた場合において、行政官庁がその労働時間の延長を不適当と認める場合においては、その後にその延長時間に相当する休憩又は休日を與えるべきことを、命ずることができる。
3 公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、第八條第十六号の事業に従事する官吏、公吏その他の公務員については、前條若しくは第四十條の労働時間を延長し、又は第三十五條の休日に労働させることができる。

(休憩)
第三十四條 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に與えなければならない。
2 前項の休憩時間は、一せいに與えなければならない。但し、行政官庁の許可を受けた場合においては、この限りでない。
3 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

(休日)
第三十五條 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を與えなければならない。
2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を與える使用者については適用しない。

(時間外及び休日の労働)
第三十六條 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二條若しくは第四十條の労働時間又は前條の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。但し、坑内労働その他命令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七條 使用者が、第三十三條若しくは前條の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後十時から午前五時(労働に関する主務大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの間において労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2 前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他命令で定める賃金は算入しない。

(時間計算)
第三十八條 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
2 坑内労働については、労働者が坑口に入つた時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。但し、この場合においては、第三十四條第二項及び第三項の休憩に関する規定は適用しない。

(年次有給休暇)
第三十九條 使用者は、一年間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した六労働日の有給休暇を與えなければならない。
2 使用者は、二年以上継続勤務した労働者に対しては、一年を超える継続勤務年数一年について、前項の休暇に一労働日を加算した有給休暇を與えなければならない。但し、この場合において総日数が二十日を超える場合においては、その超える日数については有給休暇を與えることを要しない。
3 使用者は、前二項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に與えるとともに、その期間について平均賃金を支払わなければならない。但し、請求された時季に有給休暇を與えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを與えることができる。
4 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び産前産後の女子が第六十五條の規定によつて休業した期間は、第一項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

(労働時間及び休憩の特例)
第四十條 第八條第四号、第五号及び第八号乃至第十七号の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、第三十二條の労働時間及び第三十四條の休憩に関する規定について、命令で別段の定をすることができる。
2 前項の規定による別段の定は、この法律で定める基準に近いものであつて、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない。

(適用の除外)
第四十一條 この章及び第六章で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。
 第八條第六号又は第七号の事業に従事する者
 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

第五章 安全及び衛生

(危害の防止)
第四十二條 使用者は、機械、器具その他の設備、原料若しくは材料又はガス、蒸気、粉じん等による危害を防止するために、必要な措置を講じなければならない。

第四十三條 使用者は、労働者を就業させる建設物及びその附属建設物について、換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない。

第四十四條 労働者は、危害防止のために必要な事項を遵守しなければならない。

第四十五條 使用者が第四十二條及び第四十三條の規定によつて講ずべき措置の基準及び労働者が前條の規定によつて遵守すべき事項は、命令で定める。
  
(安全装置)
第四十六條 危険な作業を必要とする機械及び器具は、必要な規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸與し、又は設置してはならない。
2 特に危険な作業を必要とする機械及び器具は、予め行政官庁の認可を受けなければ、製造し、変更し、又は設置してはならない。
3 前二項の機械及び器具の種類、必要な規格及び具備すべき安全装置は命令で定める。

(性能検査)
第四十七條 前條第二項の機械及び器具は、認可を受けた後、命令で定める期間を経過した場合においては、行政官庁の行う性能検査に合格したものでなければ使用してはならない。
2 前項の性能検査は、同項の行政官庁の外、労働に関する主務大臣が指定する他の者に行わせることができる。

(有害物の製造禁止)
第四十八條 黄リンマッチその他命令で定める有害物は、これを製造し、販売し、輸入し、又は販売の目的で所持してはならない。

(危険業務の就業制限)
第四十九條 使用者は、経験のない労働者に、運転中の機械又は動力傳導装置の危険な部分の掃除、注油、検査又は修繕をさせ、運転中の機械又は動力傳導装置に調帯又は調索の取付又は取外をさせ、動力による起重機の運転をさせその他危険な業務に就かせてはならない。
2 使用者は、必要な技能を有しない者を特に危険な業務に就かせてはならない。
3 前二項の業務の範囲、経験及び技能は、命令で定める。

(安全衛生教育)
第五十條 使用者は、労働者を雇い入れた場合においては、その労働者に対して、当該業務に関し必要な安全及び衛生のための教育を施さなければならない。

(病者の就業禁止)
第五十一條 使用者は、傳染性の疾病、精神病又は労働のために病勢が増悪するおそれのある疾病にかかった者については、就業を禁止しなければならない。
2 前項の規定によつて就業を禁止すべき疾病の種類及び程度は、命令で定める。

(健康診断)
第五十二條 一定の事業については、使用者は、労働者の雇入の際及ぴ定期に、医師に労働者の健康診断をさせなければならない。
2 使用者の指定した医師の診断を受けることを希望しない労働者は、他の医飾の健康診断を求めて、その結果を証明する書面を使用者に提出しなければならない。
3 使用者は、前二項の健康診断の結果に基いて、就業の場所又は業務の転換、労働時間の短縮その他労働者の健康の保持に必要な措置を講じなければならない。
4 第一項の事業の種類及ぴ規模並びに定期の健康診断の回数は、命令で定める。

(安全管理者及び衛生管理者)
第五十三條 一定の事業ついては、使用者は、安全管理者及ぴ衛生管理者を選任しなければならない。
2 前項の事業の種類及び規模並びに安全管理者及び衛生管理者の資格及び職務に関する事項は、命令で定める。
3 行政官庁が必要であると認める場合においては、使用者に対して、安全管理者及ぴ衛生管理者の増員又は解任を命ずることができる。

(監督上の行政措置)
第五十四條 使用者は、常時十人以上の労働者を就業させる事業、命令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の建設物、寄宿舎その他の附属建設物又は設備を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、第四十五條又は第九十六條の規定に基づいて発する命令で定める危害防止等に関する基準に則り定めた計画を、工事着手十四日前までに、行政官庁に届け出なげればならない。
2 行政官庁は、労働者の安全及び衛生に必要であると認める場合においては、工事の着手を差し止め、又は計画の変更を命ずることができる。

第五十五條 労働者を就業させる事業の建設物、寄宿舎その他の附属建設物若しくは設備又は原料若しくは材料が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、行政官庁は、使用者に対して、その全部又は一都の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができる。
2 前項の場合において、行政官庁は、使用者に命じた事項について必要な事項を労働者に命ずることができる。

第六章 女子及び年少者

(最低年齢)
第五十六條 満十六才に満たない児童は、労働者として使用してはならない。但し、満十四才以上の児童で、命令で定める義務教育の課程又はこれと同等以上と認める課程を修了した者については、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、第八條第六号乃至第十七号の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、且つその労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十二才以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。但し、映画の製作又は演劇の事業については、満十二才に満たない児童についても同様である。

(年少者の証明書)
第五十七條 使用者は、満十八才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。
2 使用者は、前條第二項の規定によつて使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。

(未成年者の労働契約)
第五十八條 親権者又は後見人は、未成年者に代つて労働契約を締結してはならない。
2 親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向つてこれを解除することができる。

第五十九條 未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない。

(年少者の労働時間及び休日)
第六十條 第三十二條第二項、第三十六條及び第四十條の規定は、満十八才に満たない者については、これを適用しない。
2 第五十六條第二項の規定によつて使用する児童については、第三十二條第一項の労働時間は、修学時間を通算して、一日について七時間、一週間について四十二時間とする。
3 使用者は、第三十二條第一項の規定にかかわらず、満十五才以上(第五十六條第一項但書に規定する満十四才以上を含む。)満十八才に満たない者については、一週間の労働時間が四十八時間を超えない限り、一週間のうち一日の労働時間を四時間以内に短縮する場合においては、他の日の労働時間を十時間まで延長することができる。

(女子の労働時間及び休日)
第六十一條 使用者は、満十八才以上の女子については、第三十六條の協定による場合においても、一日について二時間、一週間について六時間、一年について百五十時間を超えて時間外労働をさせ、又は休日に労働させてはならない。

(深夜業)
第六十二條 使用者は、満十八才に満たない者又は女子を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。但し、交替制によつて使用する満十六才以上の男子については、この限りでない。
2 労働に関する主務大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限つて、午後十一時及び午前六時とすることができる。
3 交替制によつて労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、第一項の規定にかかわらず午後十時三十分まで労働させ、又は前項の規定にかかわらず午前五時三十分から労働させることができる。
4 前三項の規定は、第三十三條第一項の規定によつて労働時間を延長する場合又は第八條第六号、第七号、第十三号、第十四号及び電話の事業については、これを適用しない。但し、第十四号の事業に使用される満十八才に満たない者については、この限りでない。
5 第一項及び第二項の時刻は、第五十六條第二項本文の規定によつて使用する児童については、第一項の時刻は、午後八時及び午前五時とし、第二項の時刻は、午後九時及び午前六時とする。

(危険有害業務の就業制限)
第六十三條 使用者は、満十八才に満たない者又は女子を第四十九條の規定による危険な業務に就かせ、又は命令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
2 使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
3 前項の規定は、同項に規定する業務中一定のものについて、命令で満十八才以上の女子に、これを準用することができる。
4 前二項に規定する業務の範囲及び前項の一定の業務の範囲は、命令で定める。

(坑内労働の禁止)
第六十四條 使用者は、満十八才満たない者又は女子を坑内で労働させてはならない。

(産前産後)
第六十五條 使用者は、六週間以内に出産する予定の女子が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
2 使用者は、産後六週間を経過しない女子を就業させてはならない。但し、産後五週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

(育児時間)
第六十六條 生後満一年に達しない生児を育てる女子は、第三十四條の休憩時間の外、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
2 使用者は、前項の育児時間中は、その女子を使用してはならない。

(生理休暇)
第六十七條 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女子又は生理に有害な業務に従事する女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならない。
2 前項の業務の範囲は、命令で定める。

(帰郷旅費)
第六十八條 満十八才に満たない者又は女子が解雇の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。ただし、満十八才に満たない者又は女子がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。

第七章 技能者の養成

(徒弟の弊害排除)
第六十九條 使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない。
2 使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない。

(技能者の養成)
第七十條 長期の教習を必要とする特定の技能者を労働の過程において養成するために必要がある場合においては、その教習方法、使用者の資格、契約期間、労働時間及び賃金に関する規程は、命令で定める。
2 前項の規定に基いて発する命令においては、その必要の限度で、第十四條の契約期間、第二十四條の賃金の支払、第三十一條の最低賃金並びに第四十九條及び第六十三條の危険有害業務の就業制限に関する規定について、別段の定をすることができる。

第七十一條 使用者は、前條の規定に基いて発する命令によつて労働者を使用しようとする場合においては、予めその員数、教習方法、契約期間、労働時間並びに賃金の基準及び支払の方法を定めて行政官庁の認可を受けなければならない。
2 使用者が前項の規定による認可に基いて労働者を雇い入れた場合においては、行政官庁に届け出て、技能を習得する者であることの証明書の交付を受け、これを事業場に備え付けなければならない。

第七十二條 前二條の規定の適用を受ける未成年者については、第三十九條第一項の規定による年次有給休暇として、十二労働日を與えなければならない。

第七十三條 第七十條及び第七十一條の規定の適用を受ける労働者を使用する使用者がその資格を失い、又は認可の條件に反した場合においては、行政官庁は、第七十一條の認可を取り消すことができる。

第七十四條 第七十條の規定に基いて発する命令は、技能者養成委員会に諮問してこれを定める。
2 技能者養成委員会の委員は、関係ある労働者を代表する者、関係ある使用者を代表する者及び公益を代表する者について、労働に関する主務大臣が各々同数を委嘱する。
3 前二項に定めるものの外、技能者養成委員会に関し必要な事項は、命令で定める。

第八章 災害補償

(療養補償)
第七十五條 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、命令で定める。

(休業補償)
第七十六條 労働者が前條の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

(障害補償)
第七十七條 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、なおつたとき身体に障害が存する場合においては、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第一に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。

(休業補償及び障害補償の例外)
第七十八條 労働者が重大な過失によつて業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい。

(遺族補償)
第七十九條 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族又は労働者の死亡当時その収入によつて生計を維持した者に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない。

(葬祭料)
第八十條 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の六十日分の葬祭料を支払わなければならない。

(打切補償)
第八十一條 第七十五條の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

(分割補償)
第八十二條 使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、第七十七條又は第七十九條の規定による補償に替え、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額を、六年にわたり毎年補償することができる。

(補償を受ける権利)
第八十三條 補償を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。
2 補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。

(他の法律との関係)
第八十四條 補償を受けるべき者が、同一の事由について、労働者災害補償保険法によつてこの法律の災害補償に相当する保険給付を受けるべき場合においては、その価額の限度において、使用者は、補償の責を免れ、又は命令で指定する法令に基いてこの法律の災害補償に相当する給付を受けるべき場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
2 使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。

(審査及び仲裁)
第八十五條 業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定その他補償の実施に関して異議のある者は、行政官庁に対して、審査又は事件の仲裁を請求することができる。
2 行政官庁は、必要があると認める場合においては、職権で審査又は事件の仲裁をすることができる。
3 行政官庁は、審査又は仲裁のために必要があると認める場合においては、医師に診断又は検案をさせることができる。
4 第一項の規定による審査又は仲裁の請求及び第二項の規定による審査又は仲裁の開始は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。

(労働者災害補償審査委員会)
第八十六條 前條の規定による審査及び仲裁の結果に不服のある者は、労働者災害補償審査委員会の審査又は仲裁を請求することができる。
2 この法律による災害補償に関する事項について、民事訴訟を提起するには、労働者災害補償審査委員会の審査又は仲裁を経なければならない。
3 労働者災害補償審査委員会の委員は、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者について、行政官庁が各々同数を委嘱する。
4 前三項に定めるものの外、労働者災害補償審査委員会に関し必要な事項は、命令で定める。

(請負事業に関する例外)
第八十七條 事業が数次の請負によつて行われる場合においては、災害補償については、その元請負人を使用者とみなす。
2 前項の場合、元請負人が書面による契約で下請負人に補償を引き受けさせた場合においては、その下請負人もまた使用者とする。但し、二以上の下請負人に、同一の事業について重複して補償を引き受けさせてはならない。
3 前項の場合、元請負人が補償の請求を受けた場合においては、補償を引き受けた下請負人に対して、まず催告すべきことを請求することができる。但し、その下請負人が破産の宣告を受け、又は行方が知れない場合においては、この限りでない。

(補償に関する細目)
第八十八條 この章に定めるものの外、補償に関する細目は、命令で定める。

第九章 就業規則

(作成及び届出の義務)
第八十九條 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、左の事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても同様である。
 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
 退職に関する事項
 退職手当その他の手当、賞與及び最低賃金額の定をする場合においては、これに関する事項
 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定をする場合においては、これに関する事項
 安全及び衛生に関する定をする場合においては、これに関する事項
 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定をする場合においては、これに関する事項
 表彰及び制裁の定をする場合においては、その種類及び程度に関する事項
 前各号の外、当該事業場の労働者のすべてに適用される定をする場合においては、これに関する事項
2 使用者は、必要がある場合においては、賃金、安全及び衛生又は災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項については、各々別に規則を定めることができる。

(作成の手続)
第九十條 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前條第一項の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

(制裁規定の制限)
第九十一條 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

(法令及び労働協約との関係)
第九十二條 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
2 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。

(効力)
第九十三條 就業規則で定める基準に達しない労働條件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となつた部分は、就業規則で定める基準による。

第十章 寄宿舎

(寄宿舎生活の自治)
第九十四條 使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない。
2 使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。

(寄宿舎生活の秩序)
第九十五條 事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、左の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。これを変更した場合においても同様である。
 起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
 行事に関する事項
 食事に関する事項
 安全及び衛生に関する事項
 建設物及び設備の管理に関する事項
2 使用者は、前項第一号乃至第四号の事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
3 使用者は、第一項の規定により届出をなすについて、前項の同意を証明する書面を添附しなければならない。
4 使用者及び寄宿舎に寄宿する労働者は、寄宿舎規則を遵守しなければならない。

(寄宿舎の設備及び安全衛生)
第九十六條 使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない。
2 使用者が前項の規定によつて講ずべき措置の基準は、命令で定める。

第十一章 監督機関

(監督組織)
第九十七條 この法律を施行するために、労働に関する主務省に労働基準局を、各都道府県に都道府県労働基準局を、各都道府県管内に労働基準監督署を置く。
2 労働に関する主務大臣が必要であると認める場合においては、数箇の都道府県労働基準局を管轄する地方労働局を置くことができる。
3 地方労働局、都道府県労働基準局及び労働基準監督署は、労働に関する主務大臣の直接の管理に属する。
4 労働基準局の職員の定員並びに地方労働局、都道府県労働基準局及び労働基準監督署の位置、名称、管轄区域及び職員の定員は、命令で定める。

第九十八條 この法律の施行及び改正に関する事項を審議するため、労働に関する主務省及び都道府県労働基準局に労働基準委員会を置く。
2 労働基準委員会は、労働に関する主務大臣及び都道府県労働基準局長の諮問に応ずるの外、労働条件の基準に関して関係行政官庁に建議することができる。
3 労働基準委員会の委員は、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者について、行政官庁が各々同数を委嘱する。
4 前三項に定めるものの外、労働基準委員会に関し必要な事項は、命令で定める。

第九十九條 労働基準局、地方労働局、都道府県労働基準局及び労働基準監督署に労働基準監督官を置くの外、命令で定める必要な職員を置くことができる。
2 労働基準局長、地方労働局長、都道府県労働基準局長及び労働基準監督署長は、労働基準監督官を以てこれに充てる。
3 労働基準監督官の資格及び任免に関する事項は、命令で定める。
4 労働基準監督官を罷免するには、命令で定める労働基準監督官分限委員会の同意を必要とする。

第百條 労働基準局長は、労働に関する主務大臣の指揮監督を受けて、地方労働局長及び都道府県労働基準局長を指揮監督し、労働基準に関する法令の制定改廃、労働基準監督官の任免教養、監督方法についての規程の制定及び調整、監督年報の作成、労働基準委員会、中央賃金委員会、技能者養成委員会及び労働基準監督官分限委員会に関する事項その他この法律の施行に関する事項を掌り、所属の官吏を指揮監督する。
2 地方労働局長は、労働基準局長の指揮監督を受けて、管内の都道府県労働基準局長を指揮監督し、監督方法の調整に関する事項を掌り、所属の官吏を指揮監督する。
3 都道府県労働基準局長は、労働基準局長又は地方労働局長の指揮監督を受けて、管内の労働基準監督署長を指揮監督し、監督方法の調整、労働基準委員会、地方賃金委員会及び労働者災害補償審査委員会に関する事項その他この法律の施行に関する事項を掌り、所属の官吏を指揮監督する。
4 労働基準監督署長は、都道府県労働基準局長の指揮監督を受けて、この法律に基く臨検、尋問、許可、認可、認定、審査、仲裁その他この法律の実施に関する事項を掌り、所属の官吏を指揮監督する。
5 労働基準局長、地方労働局長及び都道府県労働基準局長は、下級官庁の権限を自ら行い、又は所属の労働基準監督官をして行わせることができる。

(労働基準監督官の権限)
第百一條 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
2 医師たる労働基準監督官は、就業の禁止をなすべき疾病にかかつた疑のある労働者の検診をすることができる。
3 労働基準監督官は、製造を禁止された有害物の検査に必要な分量に限つて、無償で製品の見本又は原料を収去することができる。
 
第百二條 労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。

第百三條 労働者を就業させる事業の建設物、寄宿舎その他の附属建設物、設備、原料又は材料が、安全及び衛生に関して定められた基準に反し、且つ労働者に急迫した危険がある場合においては、労働基準監督官は、第五十五條の規定による行政官庁の権限を即時に行うことができる。

(監督機関に対する申告)
第百四條 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

(労働基準監督官の義務)
第百五條 労働基準監督官は、職務上知り得た秘密を漏してはならない。労働基準監督官を退官した後においても同様である。

第十二章 雑則

(法令規則の周知義務)
第百六條 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令の要旨並びに就業規則を、常時各作業場の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、労働者に周知させなければならない。
2 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。

(労働者名簿)
第百七條 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他命令で定める事項を記入しなければならない。
2 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。

(賃金台帳)
第百八條 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他命令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

(記録の保存)
第百九條 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。

(報告の義務)
第百十條 使用者又は労働者は、この法律の施行に関して、行政官庁又は労働基準監督官から要求のあった場合においては、遅滞なく必要な事項について報告し、又は出頭しなければならない。

(無料証明)
第百十一條 労働者及び労働者になろうとする者は、その戸籍に関して戸籍事務を掌る者又はその代理者に対して、無料で証明を請求することができる。使用者が、労働者及び労働者になろうとする者の戸籍に関して証明を請求する場合においても同様である。

(国及び公共団体についての適用)
第百十二條 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。

(命令の制定)
第百十三條 この法律に基いて発する命令は、その草案について、公聴会で労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者の意見を聴いて、これを制定する。

(付加金の支払)
第百十四條 裁判所は、第二十條、第二十六條、第三十一條若しくは第三十七條の規定に違反した使用者又は第三十九條第三項の規定による平均賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金の外、これと同一額の附加金の支払を命ずることができる。但し、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。

(時効)
第百十五條 この法律の規定による賃金、災害補償その他の請求権は二年間これを行わない場合においては、時効によつて消滅する。

(船員についての適用特例)
第百十六條 第一條乃至第十一條、第百十七條乃至第百十九條及び第百二十一條の規定を除くの外、この法律は、船員法による船員については、これを適用しない。

第十三章 罰則

第百十七條 第五條の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二千円以上三万円以下の罰金に処する。

第百十八條 第六條、第四十八條、第五十六條又は第六十四條の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

第百十九條 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
 第三條、第四條、第七條、第十六條、第十七條、第十八條第一項、第十九條、第二十條、第二十二條第三項、第三十一條、第三十二條、第三十四條、第三十五條、第三十六條但書、第三十七條、第三十九條、第四十二條、第四十三條、第四十六條、第四十七條、第四十九條、第五十一條、第六十條第二項若しくは第三項、第六十一條乃至第六十三條、第六十五條、第六十六條、第七十二條、第七十五條乃至第七十七條、第七十九條、第八十條、第九十四條第二項、第九十六條又は第百四條第二項の規定に違反した者
 第三十三條第二項、第五十四條第二項又は第五十五條第一項の規定による命令に違反した者
 第四十條の規定に基いて発する命令に違反した者
 第七十一條第一項の規定により認可を受けた員数、教習方法、契約期間、労働時間並びに賃金の基準及び支払の方法に違反した者

第百二十條 左の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。
 第十四條、第十五條第一項若しくは第三項、第二十二條第一項若しくは第二項、第二十三條乃至第二十七條、第三十三條第一項但書、第四十四條、第五十條、第五十二條第一項若しくは第二項、第五十三條第一項、第五十四條第一項、第五十七條乃至第五十九條、第六十七條、第六十八條、第七十一條第二項、第八十九條、第九十條第一項、第九十一條、第九十五條第一項若しくは第二項又は第百五條乃至第百九條の規定に違反した者
 第十八條第二項の規定により認可を受けた保管及び返還の方法に違反した者
 第五十三條第三項、第五十五條第二項又は第九十二條第二項の規定による命令に違反した者
 第百一條の規定による労働基準監督官の臨検、検診若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者
 第百十條の規定による行政官庁又は労働基準監督官の要求のあった場合において、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

第百二十一條 この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本條の罰金刑を科する。但し、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者、事業主が営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者である場合においてはその法定代理人を事業主とする。以下本條において同様である。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない。
2 事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつた場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する。

附則

第百二十二條 この法律施行の期日は、勅令で、これを定める。
(S22.9.1−S22政令170、S22.11.1−S22政令227)

第百二十三條 工場法、工業労働者最低年齢法、労働者災害扶助法、商店法、黄燐燐寸製造禁止法及び昭和十四年法律第八十七号は、これを廃止する。

第百二十四條 鉱業法の一部を次のように改正する。
 第七十一條第二号、第六章及び第七十五條乃至第八十條ノ四を削除し、第九十七條第三号及び第四号を削る。

第百二十五條 砂鉱法の一部を次のように改正する。
 第二十三條第一項中「第七十六條乃至第七十九條」を削り、同條第二項を削る。

第百二十六條 労働組合法の一部を次のように改正する。
 第三十二條 削除
  
第百二十七條 第十八條第二項、第四十九條、第五十七條、第六十條乃至第六十三條、第八十九條、第九十五條及び第百六乃至第百八條の規定は、この法律施行の日から六箇月間は、これを適用しない。
2 旧法によつて禁止又は制限された事項で前項の規定に係るものについては、同項の期間中は、なお従前の規定による。

第百二十八條 この法律施行の際、満十二才以上の児童を使用する使用者が、引き続きその者を使用する場合においては、この法律施行の日から六箇月間は、その者については第五十六條の規定は、これを適用しない。
2 この法律施行の際、満十六才以上の男子を使用する使用者が、引き続きその者を使用する場合においては、この法律施行の日から一年間は、その者については第六十四條の規定は、これを適用しない。

第百二十九條 この法律施行前、労働者が業務上負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合における災害補償については、なお旧法の扶助に関する規定による。

第百三十條 この法律施行前(第百二十七條第二項の場合においては、同條第一項の期間を含む。)になした行為に関する罰則の適用については、なお旧法による。
  
別表第一 身体障害等級及び災害補償表

等級 災害補償
第一級 一三四〇日分
第二級 一一九〇日分
第三級 一〇五〇日分
第四級 九二〇日分
第五級 七九〇日分
第六級 六七〇日分
第七級 五六〇日分
第八級 四五〇日分
第九級 三五〇日分
第一〇級 二七〇日分
第一一級 二〇〇日分
第一二級 一四〇日分
第一三級 九〇日分
第一四級 五〇日分



別表第二 分割補償表

種別 等級 災害補償
障害補償 第一級 二四〇日分
第二級 二一三日分
第三級 一八八日分
第四級 一六四日分
第五級 一四二日分
第六級 一二〇日分
第七級 一〇〇日分
第八級 八〇日分
第九級 六三日分
第一〇級 四八日分
第一一級 三六日分
第一二級 二五日分
第一三級 一六日分
第一四級 九日分
遺族補償   一八〇日分