解雇無効確認等請求上告(全駐労山田支部事件) 戻る
S37.07.20 最高二小裁判決 昭和36年 (オ) 189 棄却
判決理由  労働基準法が休業期間中における労働者の最低生活を保障するため、使用者に対し平均賃金の六割以上の休業手当の支払を命じているのは、休業が使用者の責に帰すべき事由によるものであることに帰因しているのであつて、もとより使用者に対し無過失賠償責任を課したものではないから、当該休業が使用者の責に帰すべき事由によるものである限り、使用者は、所定の休業手当を支払うべき義務を負担し、所論のごとく、その期間内に労働者が他の職について平均賃金の六割以上の収入を得たことによつて当然にその支払を免かるべきいわれはない。論旨引用にかかる旧労働基準法施行規則一〇条削除の理由は、同条が平均賃金の六割という法の定めた最低限度以上の手当の支払を罰則や附加金をもつて強制することとなつて法律違反の疑があるということにあるのであつて、所論のごとく、休業期間中における労働者の収入の総額を平均賃金の六割の限度におさえんとする趣旨に出たものではない。従つて、これをもつて労働基準法二六条に関する前記解釈を左右するに足る資料とはなしえない、といわなければならない。
 労働基準法二六条は、民法五三六条二項の特別規定であつて、労働者の労務の履行の提供を要せずして使用者に反対給付の責任を認めているものと解すべきであるから、休業と解雇とではその期間内に労働者が他の職につく自由の点において異なるところがあるとして、解雇の場合に労働基準法二六条の適用を否定せんとする論旨は、その理由がない。
 されば、原判決が被上告人の解雇期間内に他の職について得た利益は上告人に償還すべきであると認めながら、その償還の限度を平均賃金の四割にとどめ、上告人に対し被上告人の解雇期間中の賃金として、平均賃金の六割相当の賃金の支払を命じたことは正当であつて、所論の違法はなく、論旨は、これと反する独自の見解に立脚して原判決を非難するに過ぎず、すべて採用しえない。